危険学でいつも勉強させていただいている畑村先生が
原発事故調査委員会のトップになりました。
原発事故調トップに畑村・東大名誉教授 政府が発表
2011/5/24 10:06
政府は24日、東京電力の福島第1原子力発電所事故について原因などを検証する「事故調査・検証委員会」の委員長に畑村洋太郎東大名誉教授を起用すると発表した。今後は畑村氏を中心に委員の人選を進めて月内に委員会を立ち上げ、原因究明や再発防止に向けた検証作業に入る。事務局長には検察官を起用する方針だ。
畑村氏は「失敗学」などの切り口で経営学分野で活動しており、「失敗学のすすめ」などの著書がある。
仙谷由人官房副長官は24日午前の記者会見で「畑村氏は委員長として最も適任。なれ合いやかばい合いの疑念を少しでも抱かれることのないようにメンバーの人選を進めたい」と語った。
〔日経QUICKニュース)
「悪意」に基づき危険探知 東大名誉教授 畑村洋太郎氏
東日本大震災 科学者が語る
2011/5/16 4:00
日本経済新聞 朝刊 ――「失敗学」の提唱者の目から今回の大震災と原発事故はどう映る?
「痛ましい事故を防ごうと失敗に学ぶ設計論を説いてきたが、事故は繰り返し起きている。失敗学だけでは不十分だ。社会全体で、どこにどんな危険が潜んでいるのかを知り、備える必要がある」
「そこで2007年から、『危険学』と銘打ったプロジェクトを企業と協力して始めた。昔から怖いなと感じていた対象をテーマに取り上げ、津波と原子力も入っている。東日本大震災で危険が現実になった」
――津波への備えは万全ではなかったか。
「1896年の明治三陸地震と1933年の昭和三陸地震で東北地方の太平洋側に大津波が押し寄せた。100年に1度の大津波は十分予想でき た。先人が石碑に残した『ここより下に家を建てるな』という教えを守った地区では亡くなった人はいなかった。しかし人々は、日々の生活に便利だからとまた 港近くに家を建てる。危険を忘れ、再び被害に遭遇する」
「岩手県釜石市で大津波に対する避難訓練を続けてきた小中学校は、生徒全員が無事だった。先生の指示を待たず『とにかく高台に逃げろ』を徹底していたという。一方、運動場で点呼を受けているうちに津波が近付き、多くの児童が犠牲になった小学校もあった。マニュアルに従うこれまでの訓練は自分で危険を考えない。重要な教訓だ」
――事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所の備えをどうみる。
「原発はまさに国が定めた安全基準に基づいて建設し運転する。東電やメーカーに、国の基準通りにすれば問題ないという意識があったのではないか。非常用電源をも失う津波は来ないとみて対策を後回しにしたが、これからは発想を逆にする必要がある。原発を破壊するような津波を想定して対策を考え なければいけない」
「東電は07年の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が被害を受けた。危ないと思った炉や配管は大丈夫だったが、重要と考えなかったクレーンや消火用配管などが壊れ、発電所全体が機能不全に陥った。そう指摘すると東電は施設を見直し強化したが、警告は福島第1原発まで届かなかった」
――原発の安全性を高める方法はあるか。
「日本企業には、制御によって安全を確保する考えが染みついている。都内の高層ビルで04年、回転ドアに6歳の男児がはさまれて亡くなる事故が起きた。6種類のセンサーで危険を察知して止める仕組みを備えた結果、ドアは2.7トンもの重量になり、すぐに止まらなくなっていた。人をはさめばドアがポキリと折れる方が安全だ」
「原子炉の安全対策は、電源喪失で破綻してはいけない。できるだけ制御に頼らず本質的に安全な仕組みを備えられるかどうかが、原子力存続のカギを握る。事故を客観的に検証し、再発防止策を考えるべきだ」
――隕石(いんせき)の衝突にも備えよという意見がある。
「確率をわきまえた議論が必要だ。可能性の非常に乏しい隕石の衝突は想定しなくても、テロリストによる攻撃、例えば冷却用の海水を取り込む 施設の破壊は考えなければいけないかもしれない。『悪意の鬼』となって危険を見つけだし、その情報を社会で共有することから対策は始まる」
(聞き手は編集委員 永田好生)